西園寺先生は紡木さんに触れたい
「ん〜、今日はとりあえずここまでにしようか。」
補講が始まってから約1時間経過した頃。
西園寺のその声で紡木はペンを放り投げて「うーん…。」と伸びをした。
「やった〜、じゃあこれからケイト先生に質問大会だね!」
嬉しそうにはしゃぐ葵とは別に「けっ、くだらね〜。」と言いつつ立ち去ろうとしない蓮と、「はーい。じゃあ。」と颯爽と教室を出ようとする紡木。
そんな紡木の襟を葵は思いっきり掴んで「ツムちゃんも知りたいよね〜?」と半ば強制的に椅子に座らせた。
別に知りたくも無いんだけど…。
紡木の心の呟きは表に出ることなく、葵が西園寺に質問を始めた。
「ケイト先生って好きな人いないの〜?」
その葵の言葉に、紡木の心臓はびくんと跳ね上がった。
好きな人─
あの日の先生から気持ちが変わっていなかったら、それはきっと私のことだ。
「ん〜…、いるよ。」
その言葉につい西園寺の方を見ると、その視線に気づいた彼がいたずらっ子のような笑みを紡木に向けた。