龍神さまのいるところ
第17章

第1話

 翌日、登校してきた校門の前で、舞香は待っていた。

顔を見るなり俺の腕に絡みつく。

「おはよう。私に会えなくて寂しかった?」

「舞香を返せ」

「どうして? 私は私なのに?」

「舞香はハクのことが好きだったんだぞ」

「今でも好きだってよ」

 その腕を振り払う。

「お前がその気なら、俺は許さない」

「ここであったことを話せ」

「お前の探しているものはなかった」

 舞香の顔が歪む。

そうさせているのは、ハクだ。

そうだ。

ハクの探しているのは、宝玉なんだ。

あの白銀の龍じゃない。

「お前の探しているのは、誰の宝玉だ」

「……。やはり、ここで会ったのだな」

 しまった! 

「会ってない」

「何を話した」

 舞香の手が、俺の胸ぐらを締め上げる。

「なんと言っていた。お前に、何を伝えた」

「ハク……、こんな目立つところで、いいのか?」

 今は朝の校門前。

登校してくる生徒たちの、注目の的だ。

話しをするにも無理がある。

だけどそんな人間の都合は、ハクには通じない。

「全てを話せ!」

「舞香ちゃ〜ん!」

 彼女の腕を押さえたのは、山本だった。

「こんなところで痴話喧嘩は、さすがにダメだよぉ〜」

「放せ!」

 いくら舞香がハクでも、男2人に女の子1人の力じゃ敵わない。

もしくは、ハクに宝玉がないから?

「圭吾もこんなところで怒らせないの! さぁ、一旦落ち着こう」

 騒ぎに気付いたみゆきも、やってきた。

「ま~いか! 愚痴なら聞いてあげっから。教室行こ」

 みゆきは舞香の肩を抱き寄せた。

そのまま靴箱へと向かってゆく。

ハクは大人しくなったようだが、舞香に戻ったかどうかは分からない。

山本は盛大なため息をつく。

「で、ケンカの原因はなに?」

「荒木さん」

「……。圭吾、あきらめろ」

 やかましいわ。

そうは思っても、だけどそれ以上は、なにも言えない。

「ま、本当のことを言いたくないなら、それでもいいけど、困った時は相談くらいしろよ。友達だろ?」

 山本を見た。

ニッと愛想よく笑ってくれても、こんなこと、誰にも相談出来ない。

教室へ向かう階段を上る。

あれ? 

そう言えばコイツって、ハクが見えてるんだっけ? 

山本の制服の白いシャツは、俺のすぐ目の前を上ってゆく。
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