雪の国の恋、とけない魔法
プロローグ

プロローグ
✴︎雪の国✴︎



魔法みたいだ。

見渡す限り、一面、真っ白!

雪が大地に深く積もっていた。
おそらく上の方だけが見えているのだろう。低く細い木々の枝には、クリームみたいな雪がポワンとあちこち乗っている。

上り坂を走るバスの車道も真っ白、道路脇の2メートルほどの雪の層の間をスイスイ走る。
まるでバームクーヘンを切ったみたいだ、と思った。

1時間ほど登っただろうか。


「わぁっ! 」


と、思わず声が出た。
ポワンポワンと雪をのせて、まるでおとぎ話の宮殿のような建物が突然、山の中に見えてきた。あれが私たちが3夜泊まるホテルだという。

見上げる三角屋根、張り出した窓、ケーキのクリームのような雪。

飛行機と電車とバスで半日かけてここに来た。

真っ白な雪の国に、今、降り立つ。
見上げれば、広い広い天から雪の粉が舞い落ち降り注ぐ。
私にも魔法がかかればいいのに。

変われるかな、新しい自分に。

バスから降りて、雪の上に踏み出す。
足の下でふわふわの雪がキュッと音を立てた。
キュッ、キュッ、
魔法の国に一歩一歩、入っていくみたい。



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