雪の国の恋、とけない魔法
ホテルの部屋から階下のロビーに下りて、その脇から出てちょっと行った廊下の端。
スキーの用具ロッカーに行った。
私物の板や靴を家から送った人の分も、ここに届いている。各自自分の持ち物を、部屋番号のロッカーに入れながら準備する。
上月さんは黒基調のかっこいいウエアだった。
ゴーグルが付いているヘルメットを、慣れた感じで装着。
靴は下半分と後ろ側が透明な琥珀色みたいな、いい感じのもので、さっと履いて、パチンパチンと留め具をはめていく。
立ち上がって、板を無造作に担いで、その仕草に見惚れる。
ゴーグルから何やら線が2本。
ぼんやりその線を見ていたら、
「これ曇り止め。ゴーグルって曇るんだ。こっちは無線。Bluetoothで滑りながら仲間と話ができる」
すごいな、って彼を見たら目が合った。
何やら上月さんがにこっと笑ったので、ドキッとした。
今回は滑らない藤枝さんも、同じように線のついたヘルメットをつけていた。いつもは滑りながらお互い話すことができるんだろう。
他の人もばっちりの装備で、リフト券の準備がすんだら、ゲレンデへと向かっていく。
彼の後ろ姿。
私もほんとは滑れたら、あんな風に慣れた感じで、一緒に行けたのに、何となく苦い気持ちになった。
あっという間にゲレンデに消えて、他のスキー客にまざり、そしてリフト入り口に吸い込まれて行った。
上月さん、行っちゃった⋯⋯ 。
私は私の事をちゃんとする!
頑張る!
美紀とまず用具をレンタルしなきゃ。