雪の国の恋、とけない魔法
受付カウンターの左隣に、ウェアや靴、板、スティックなどの道具のレンタルコーナーがある。
藤枝さんがついてきてくれた。
怪我してる本人には申し訳ないけど、準備についてきてもらえたのはありがたく思った。
あれこれ教えてくれる。
「あれ? これ何? 」
「入らないよ⋯⋯ 」
「え、靴かたい⋯⋯ 」
スキー用の靴を履くのでさえ一苦労だった。
思ったよりかたくて、重くて、足が拘束されて、錘をつけているみたい。
金具の止め方がわからないのを、藤枝さんが根気よく丁寧に教えてくれる。
この人、やっぱり親切なようだ。
美紀は始終真っ赤であせって、アワアワしてるけど、なんか、第三者って見えることがあるんだ。
もしかしてというか、多分なんとなく、藤枝さんも美紀の事、考えてるんじゃないのかな。
同じように親切にしながら、優しい目つきで美紀を見ている。今も確実に美紀に近くて、覗くように見たり、手で支えてあげたり、ほら、私には全く触れてこない。
それもいい人だと思う。
信頼できる。
もしかして、もしかして、ソワソワするぐらい期待してしまう。
いますぐ藤枝さんをよびだして、美紀の事! どう思ってるの? って問いただしたいよ。
上手くいくよ、美紀。
大丈夫だよ!
なんとかレンタルしてから、花梨が全くの初心者と聞いて、藤枝さんはスクールをやはり薦めてくれた。動機やきっかけはなんでアレ、せっかくきたんだもんね。頑張りたいと思う。自信のない自分だけど前を向いていたい。
グループレッスンが明日は空いてなくて、仕方ない、ちょっと、奮発してプライベートスクールを半日予約した。
そんなことをしていたら、ゲレンデで3本ほど滑ってきたというみんなが帰ってきて、今日はそのまま用具を担いてホテルのロッカーにいれた。