雪の国の恋、とけない魔法
まるで魔法

✴︎まるで魔法✴︎


「お土産買いに行く? 」


今日の夕食、魚介類の炭火焼きを食べて、出口でドアを押さえながら、覗き込むようにして上月さんに聞かれた。背の高い上月さんを見上げる。彼の後ろに入り口の光が逆光になり陰影をつけていた。

皆それぞれに部屋に戻ったり、温泉に行ったり、私たち2人だけ、そのままそっと回廊に向かった。

ここのホテルは、宮殿のような宿泊する建物のロビーに小さな洒落た喫茶室と、2階にイタリアンがあり、その2階部分横に広い自動扉がある。そこから一度外に出て、中庭を囲むように左右に建物が広がり、回廊のようになっていた。
右手回廊沿いににショップ、左手回廊沿いには温泉やフィットネスの建物入口がある。

さらに。
その回廊とは別に。
メインの建物に沿っても回廊があり、ステーキハウス、アジア中華レストラン、日本料理店、炭火焼き、が、それぞれの独立した大きな建物で店を構えていた。

店の屋根にはふんわり、分厚い雪が積もり、入り口は雪かきして道が作ってあり、道以外は2メートルほど雪の層。

時折、さらに思い出したように雪がふり、それはまたすぐフワフワと重なり合い、すぐに道は白くなる。

遠くにゲレンデの街灯。

白くて甘くて、お菓子みたいな雪の国。

中庭には、かわいらしい、丸いかまくらが5個。中央をまるくかこみ、プロジェクションマッピングで幻想的に照らされているので、おとぎ話の中にいるようだ。

寒いから人がいなくて、夜、白い雪の中、まるで世界に2人きりみたい。

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