雪の国の恋、とけない魔法


「寒いし、とりあえずこっち入る? もし翔が戻ってきたら。部屋に戻ればいい」

「⋯⋯ でも、」


ってこんな時、どうすればいいんだろう⋯⋯ 。
こんな部屋に2人って、どんな状況でもまずいって長年思い込んできた。というか、そんな状況、想定もしてなかったから、対処が⋯⋯ 。

たぶん、あの3人組に声をかけて、ほら、女の子だし、いやでも、山に置き去りにされるほどの仲の人たちに? そっちのが怖そう、ホテルの人に開けてもらう? でも、もしもよ、もしや、いい感じになってたら⋯⋯ いや美紀は酔ってたから⋯⋯ 疑ってはいけない⋯⋯ 。


「はぁ、何考えての、頭ん中」

「いえいえ。いろいろ、そりゃ、いろいろ」

「しょうがないよね」


と上月さんが苦笑した。


「寒いから入って」


バタン

あ、入っちゃった。
同じホテルの部屋なのに、男の人の荷物が置いてあるだけで随分と雰囲気が違って見える。
それに、電気が、薄暗いよ、上月さんは部屋備え付けの上下に分かれた甚兵衛をきて、どうやらもう寝るとこだった?


「はい、まぁ、座れって」


椅子をすすめられる。
そのまま上月さんは左手で携帯を操作した。


「翔に連絡した」


どうなったんだろう。

画面を見て操作している。
手が大きいから、片手で簡単に出来るんだ。


「美紀ちゃんの様子を見てるからもうちょっといい? って」


チラリと画面から目をあげて、


「じゃ、いっそ、花梨がこっちの部屋にいるから、チェンジしとく? 」


と花梨の目を見ながら、


「って、送信」


静かな部屋に、上月さんの声だけ。


「したよ」

「⋯⋯  」

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