僕らはきっと
「どこだっけ?」
頬杖をついてぼんやりと外を見ていると、左の席から声がした。
「…え?」
「課題、何ページからか知ってる?」
人懐っこそうな笑顔でこちらを覗き込む長身の男。
これが寺坂昇との出会いだった。

元々、僕は人間関係に全く期待していなかった。僕の部屋には励ましの言葉が並んだ色紙が無造作に置かれている。幼稚園、小学校、中学校と通算、何度渡されただろう。色紙には、その人の想いが表れるから面白い。当たり障りのない言葉を選んだこの子は、きっと周りの同調圧力で書かされたんだろうな、ゲームをやろうぜ、と書いてあるこの男子はきっとクラスの人気者なんだろうな、と想像をしていた。これまでほとんど学校に通えず
「病気の子」というレッテルを貼られた僕に友達が出来る訳なく、たまに見舞いに来る同級生たちは親切心で訪問した、という者ばかりだった。その生徒たちに罪はないが、病気で可哀想だから何かしてあげないと、という学校側のその配慮なのか押し付けなのか、それがたまらなく嫌だった。
そんなことだから、僕はこれから始まる高校生活に期待なんて全くしていなかったんだ。
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