僕らはきっと
寺坂はなかなか人気があるらしい。女子が数人固まって、「寺坂君ってかっこいいよね。」と話しているのを聞いた。話したこともない自分に話しかけてきたタフさがあるもんな、と爽やかな笑顔を思い出して一人納得した。あれから、席替えがあり、僕は寺坂と席が隣になった。普通なら入学してすぐの席替えでは隣同士になったことをきっかけに仲が深まっていくようだが、当然僕は話しかける気がなく、前回同様、向こうから「あのさ、」と話しかけられた。
「部活見学、行かない?」
予想もしなかった言葉に一瞬固まった。だが、すぐに「あぁ、そうか。」となった。長い入院生活で中高には部活動があることを完全に忘れていた。というか、入る気なんてさらさら無かった。そもそも、病気の僕が入ることの出来る部活なぞ限られている。せいぜい、生物部や社会部といったところか。
「ごめん、部活入る気ないんだ。」
「え、なんで」
「なんでって・・・」
運動制限があるから運動部には入れないし、かといって文化部といっても楽器は体に負担が掛かる。それ以外に探してまで部活に入っても、という思いがあった。
「入りたい、部活が無くって。」
「でも見なきゃわかんないよ、俺、気になってる部活があるんだけど、入らなくてもいいから一緒に付いてきてくんない?ね、」
往生際の悪い奴だ。第一印象の爽やかさはどこにいったんだ。
手を合わせる寺坂にとうとう諦めて、僕は言った。
「分かったよ、で、なんの部活?」
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