幼なじみじゃ、いられない。


小さい子から年齢順に、楽曲の難易度も考慮しながら演奏していく発表会。

あたしの前か後ろには、ほぼ確実にりっくんの演奏が入る。

聴きに来てくれる人達の手前もあり、りっくんよりもあからさまに簡単なもの、下手な演奏は出来ない。


「りっくんはまだ次の曲考えてない?」

「うーん、全然考えてないことはないけど……」


言いながらりっくんは、『弦楽器』と書かれたコーナーの楽譜に手を伸ばす。


「今回はピアノより、ヴァイオリンをやりたいなって思ってて……」


手に取った楽譜を、パラパラと流すようにめくるりっくん。

だけどその手を、急にピタッと止めて。


「あ、そうだひな、発表会で二重奏やんない?」

「えっ?」

「俺がヴァイオリンで、ひながピアノ。最近すごく上手く出来てるから、誰かに聴いてほしいと思ってたんだ」


パタンと楽譜を閉じて、りっくんはキラキラした瞳であたしを見る。


発表会で、りっくんと二重奏……。


「や、やりたい!」


食い気味にあたしが返事すると「じゃあ決まり!」と、りっくんは嬉しそうに言って、


「母さんには俺から相談しておくから」


と、にこりと微笑んだ。
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