幼なじみじゃ、いられない。


「これっていう出来事があったわけじゃないけど、ひなの一生懸命なところが、すごく好きだと思った」

「一生懸命……?」

「うん、ピアノの練習もそうだし、他のことでも。必死に頑張ってるひなの姿が、なんていうか……すごく愛おしくて、気付いたら好きだった」


優しい目をして、真っ直ぐに言うりっくんに、あたしの顔は恥ずかしさに赤くなる。


ピアノの練習とか一生懸命だったのは、そうじゃないと付いていけなかっただけ。

でも、りっくんがそんな風に思っていてくれたなんて、とても嬉しい。

嬉しい……けど──。


「だからこうして、ひなの彼氏になることが出来て、すごい幸せ」


そう言って、足を止めたりっくんは、手を繋いだままあたしの方に向き直る。

そして、もう片方の手であたしの頬に触れて。


トロンとした目で見るりっくんに、ドキッとして身体が固まる。


これから何が起こるのか、お付き合い経験値ゼロのあたしでも、雰囲気で分かる。


ゆっくりと近付いてくる、りっくんの顔。

あたしは思わずぎゅっと、強く目を閉じた。
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