幼なじみじゃ、いられない。

***


「ごめん、お待たせ」


りっくんの家の前。

一度家に入って、すぐに出てきたりっくんは、「はい、これ」と長方形の紙袋を手渡してくれた。

中身をチラッと確認したあたしは、「ありがとう!」とお礼を言う。


デート帰り、りっくんの家に寄って貸してもらったのは、数冊の楽譜集。


「適当に見てもらって、気に入ったのあれば教えて。俺も色々考えてみるから」


りっくんの言葉に、コクンと頷く。


次の発表会でりっくんと演奏する曲を選ぶため、楽譜集を何冊か貸してもらった。


発表会で二重奏なんて、りっくんの足を引っ張るだけなんじゃないかと不安もある。

だけど、りっくんと一緒に演奏出来るのが、今から楽しみでしょうがない。


「弾きたいの見つけたら、すぐに連絡するね!」


紙袋を抱えて返事すると、りっくんは「うん」と頷いて。


「今日はありがと。ひなと過ごせて、すごい楽しかったし、嬉しかった」


少しはにかむように微笑んで、そう告げてくれた。
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