幼なじみじゃ、いられない。
放課後、千明ちゃんと佳穂ちゃんには教室でバイバイして、あたしはひと足早く学校を後にした。
幼稚園の年中さんから習っているピアノ。
水曜日はそのレッスンの日。
急いで家に帰ると、着替えて楽譜の入ったカバンを持って家を出た。
ピアノ教室はうちから徒歩3分くらいの、本当に近所にあって。
教室と言っても個人教室だから、見た目は普通の……ううん、普通より少し立派なお家。
「こんにちはー」
挨拶しながら大きな玄関のドアをガチャリと開けると、ちょうど前のレッスンの女の子が出てきたところで「いらっしゃい」と、先生が迎えてくれた。
「先生、ありがとうございました」
礼儀正しくペコっと頭を下げて出て行くのは、小学3、4年生くらいの子だろうか。
入れ替わるように家に上がって、ピアノの置いてある防音室に入りながら、「可愛いですね」と先生に声をかける。すると、
「うん、ひなちゃんも律もこの前まであのくらいだった気がするのにね」
と、ママとそう年齢が変わらない先生は、昔を懐かしむように優しく微笑んだ。