敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
そんな彼のもとに近付いていこうとすると、匡くんと同年代ぐらいの女性ふたりが私よりも先に彼に声を掛けた。
匡くんがスマートフォンから顔を上げて訝しげな表情を作る。
知り合いというわけではなさそうな雰囲気に、あれはおそらくナンパだろうと気が付いた。いや、女性が男性に声を掛けるのは逆ナンっていうんだっけ。中学二年の私にもそのくらいの知識はあった。
本当にこういうことってあるんだなぁ、と興味津々で匡くんたちの様子を見つめる。私の距離からだと声は聞こえないけれど、女性たちがバッグからスマートフォンを取り出したところを見ると連絡先の交換をしようとしているのかもしれない。
それに対して匡くんはスマートフォンをジャケットにしまい、首を横に振った。交換したくなくて断ったのだろう。
けれど、女性たちはなかなか引かず、しつこく匡くんに迫っている。彼がうんざりしたようにため息を吐いても女性たちはお構いなしに声を掛け続けていた。