敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
*
「――お前はこっちが心配になるくらいのお人好しだな」
「ごめんね、匡くん。せっかくいろいろと調べて、動いてくれたのに……」
帰りの車内で、ハンドルを握る匡くんの隣で私は視線を落とした。
どうして私と和磨の話し合いの場に匡くんが現れたのかもさっき教えてもらった。
本当は今日、匡くんが和磨と話をするつもりだったらしい。和磨の仕事が終わるのをこっそりと待っていたところに私が現れて、和磨と一緒にどこかに向かったので慌ててあとをつけてきたそうだ。
しばらく私と和磨がふたりで話す様子を見守っていたが、私が追い込まれそうになったところで加勢にきてくれた。
ひとりで解決させると息巻いておきながら結局は匡くんの助けを借りてしまった。それに、慰謝料を払うことで一度は話がまとまったのに、やっぱり受け取らない方向に私が変えてしまい、せっかくいろいろと調べて動いてくれた匡くんには申し訳ない。
「杏がそれでいいと思ったなら俺は構わない」
信号が赤に変わったタイミングで匡くんの手が私の髪をくしゃっと撫でた。
「ちょっと寄り道していくか」
信号が青に変わると、真っ直ぐ進むはずの交差点を左折して、匡くんの運転する車はマンションとは別方向に走り始めた。時刻はもうすぐ午後八時になろうとしている。
「寄り道って、どこに行くの?」
「内緒」
そう答えて匡くんが車を走らせて私を連れてきたのは羽田空港だった。