敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
屋外展望デッキに向かうと昼間とは雰囲気を変えて、デッキに埋め込まれた無数のLEDライトが輝き幻想的な空間を作っている。
眼下にある駐機場には匡くんの航空会社の名前の入った飛行機も数機停まっていた。
「空、すっかり晴れたな」
手すりに軽く手を置いた匡くんが視線を上に向ける。そこには雨を降らせていた分厚い雲はもうなくて、漆黒の空が広がっていた。
そよそよと吹く風が冷たくて、隣に立つ匡くんにぴったりと体をくっつける。私に視線を落とした彼の腕が腰にまわり引き寄せられた。
そっと顔を上げると匡くんの顔が近づいてきて唇を塞がれる。短いキスのあと彼の視線は再び駐機場に向けられた。
「杏は新婚旅行どこに行きたい?」
「新婚旅行?」
「まだ結婚式も挙げてないから海外で新婚旅行も兼ねてふたりきりで式を挙げるのもいいな」
唐突な提案に私は目をぱちくりとさせてしまう。
結婚したもののそういった話題は一切出ていなかったので結婚式も新婚旅行もしないのだと思っていた。
「でも杏に海外は無理か。飛行機は乗りたくない乗り物ナンバーワンだもんな」
「うっ……」
匡くんの前でそう断言したことがある。よくよく考えたら、パイロットである彼に対して言うセリフではなかったかもしれない。
「で、でも。今なら乗れると思う」
私は視線を上に向けて匡くんを見つめた。