敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
「――えっ⁉ 杏ちゃん離婚しちゃったの?」
「はい。実は六月に……」
食後、久しぶりに会った私たちはお互いの近況などを語り合い、その流れで私は離婚したことを報告した。
「ええっと……理由って聞いてもいいのかな」
牧田さんが聞きづらそうに尋ねてくる。
昨日の匡くんのときもそうだったけれど、やはり離婚という話題は扱いづらいものらしい。そりゃそうだよなと思いつつ口を開く。
「お恥ずかしながら、元夫に不倫されちゃいました」
扱いづらい話題だからこそなるべく深刻にならないよう、できるだけ明るい声を出した。
もう気にしていません、吹っ切れていますよー、という雰囲気を出そうとしたものの、牧田さんは私が無理して強がっているのを見抜いたようだ。
反応に困ったように視線を泳がせたあとで再び私を見た彼女の表情は少し泣きそうになっていた。
「そっか。大変だったね、杏ちゃん。相談に乗れなくてごめんね。つらかったよね」
ぐすんと鼻をすする牧田さんの両手が正面から伸びてきて、向かいに座る私の手をそっと優しく包み込んだ。
彼女の指先には私が施したネイルが輝いている。
私のために悲しんでくれる優しい牧田さんが、どうか私のようなつらい思いをすることなく幸せな結婚生活を送れるよう願わずにはいられなかった。