敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている

 それから五分ほどで立派な店構えの、見るからに高級だとわかる焼肉店の前に到着した。

 てっきりチェーン店を想像していた私は、まさかの高級店を目の前に立ち尽くしてしまう。「行くぞ」と匡くんに声を掛けられてハッと我に返った。

 店員の案内で通されたのは半個室のテーブル席。椅子に腰を下ろすも、高級店の雰囲気にすっかり呑まれてしまい落ち着かない。

 無駄に辺りをきょろきょろと見回しながら、正面に座る匡くんに声を掛ける。

「匡くんはこのお店にはよく来るの?」
「そんな頻繁でもないが、同僚と食事をするときは決まってここだな」

 同僚ということは匡くんと同じ航空会社の人たちだろう。私相手にご馳走してくれるなら、こんな高級店じゃなくてチェーン店でよかったのに。

 ……私、浮いてないかな。

 ふと自分の服装が気になり始めた。

 アイボリーカラーのさらりとした生地感の七分袖カットソーに黒色のアンクルパンツ。施術のじゃまにならず汚れても洗いやすい服を選ぶとどうしてもシンプルになってしまう。

 着替えることなく仕事着のまま、胸の下あたりまで伸びているチョコレートブラウン色の髪も施術のじゃまにならないようにざっくりとお団子にまとめた状態のままの私は、高級店で浮いていないだろうか。

 匡くんも私と同じくシンプルなコーディネートだけれど、私と違って元々の素材がいいのでどんな服装でも見劣りしない上品さがある。羨ましい。
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