敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
この前の電話では食べたい部位をあれこれ挙げたけれど、高級店の金額には尻込みしてしまう。匡くんとは子供の頃からの知り合いで気兼ねのない間柄とはいえさすがに遠慮してしまった。
ここはやっぱり奢ってもらおうかな……。
注文を終えてまずはビールがテーブルに届くと、私たちは三年振りの再会に乾杯をした。
仕事終わりの一杯は特に美味しく、喉を鳴らしてグビグビと一気に半分ほど飲んでしまう。ジョッキをテーブルに置くと、正面に座る匡くんの口元がふっと緩まる。
「杏とこうして酒が飲めるようになるとはな」
感慨深そうに呟いてから匡くんもジョッキに口をつけた。
パイロットはお酒を飲むのにも制限があるらしいけれど、明日が休みの匡くんは今夜は飲んでも大丈夫らしい。
それからすぐに前菜が届き、半熟卵をたっぷりと絡めて食べる炙りユッケが登場し、サラダと続く。それからテーブルには厚切りの上タンがやってきた。
ワイシャツに黒のベストとネクタイ姿の男性店員が目の前で焼いてくれるらしく、網の上ではじゅーじゅーと音をたてて上タンが焼かれていく。
「わぁ、すごい! 厚い! 美味しそう!」
少しすると上タンがいい具合に焼けて、男性店員が一礼してテーブルを後にした。
さっそく網の上の上タンを自分のお皿に運ぶ。いただきますと手を合わせてから、箸で掴んで口に入れた上タンは柔らかく、とろけるような旨味がぎゅっと詰まっている。