敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
「美味しいっ!」
目を見開いて叫んでしまうと、そんな私の反応を見た匡くんが優しく目を細める。
「それならよかった」
彼もまた上タンを口に含んだ。
その後も各部位のお肉が運ばれてきたので網の上に乗せて焼いていく。
その作業をしてくれたのは匡くんで、絶妙な焼き加減になると私のお皿にお肉を乗せてくれた。
箸休めのスープが出てきたあとはシャトーブリアンの登場だ。実際に食べるのは初めてかもしれない。
牛ヒレ肉の中でも特に肉質のいい真ん中の部分を使ったステーキ。切り分けられて四切れあるうちのひと切れを箸で掴んで口に入れる。
「美味しい~!」
これが最高峰のお肉……!
柔らかくて口に入れた途端にとろけていく。そして口の中に広がる肉汁。
飲み込んでからも美味しさの余韻に浸っていると、それを見た匡くんがぷっと吹き出す。
「杏はいちいち反応がいいから食べさせ甲斐があるな。俺のも食べていいよ」
「えっ、でもこれは匡くんの……」
「杏のくせに遠慮するな」
匡くんが私のお皿に自分のシャトーブリアンのステーキを乗せてくれた。それにしても、杏のくせにってどういう意味だろう。私だってちゃんと遠慮できる。
けれど、匡くんから借りた上着のときのように、ここで食べる食べないの押し問答を繰り広げてもせっかくのシャトーブリアンが冷めていくだけなので、ありがたく匡くんの分も頂くことにした。