敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
目の前では匡くんが眉間の皺をさらに深くして唇を固く引き結んでいる。殺気すら感じる視線がこわくて思わず彼から目を逸らした。
匡くん怒ってる?
いや、たぶん呆れているのかもしれない。女癖が悪いと知りながらも出会ってからわずか半年で結婚して、一年も絶たずに離婚した私に……。
匡くんはコーヒーの入ったカップに手を伸ばし、残りを一気に飲み干した。
「杏はむかしからそうだ。そういう悪そうな男に惹かれるよな」
軽くため息を吐いた匡くんが言葉を続ける。
「高校生の頃、制服を着崩している金髪の見るからに不良の男と付き合っていただろ」
「え、どうしてそれを……」
当時の彼氏の顔を思い出す。
たしかあの頃の匡くんは実家を出てひとり暮らしをしていたはずだから、私たちはあまり顔を合わせてはいなかった。それなのになぜ私の彼氏を知っているのだろう。
「久しぶりに実家に戻れば、学校帰りの杏がマンションのエントランス前で男とキスをしていた」
「み、見たの?」
「見たくもないものを見せられた俺の身にもなれ」
うわぁ……見られていたなんて少しも気付かなかった。
匡くんの言う彼氏とは高校一年生の頃の半年ほど交際していた。学校帰りに私をマンションまで送ってくれて、去り際にキスをしてくれるような彼氏だったけれど『他に好きな子ができたから』と言われてあっさりと振られた。