敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている

 どうやら私はその頃から男に捨てられるタイプの女らしい。過去の失恋と今回の離婚がダブルパンチで私の心を殴ってくる。

 そのダメージにがっくりと肩を落とす私にちらりと視線を寄越した匡くんが静かに口を開く。

「杏は今は実家にいるのか」
「うん。でも、実家なくなりそうなんだよね」
「どういうことだ」

 匡くんが眉をひそめる。

「お母さんとお兄ちゃんの家族が新しい家を建てて同居するの。だから実家を売却するらしい」

 私もつい最近知ったばかりの事実を匡くんに打ち明けた。

「だから私はアパートを借りてひとり暮らしをするしかなくて……」
「その言い方だと不満そうに聞こえるが」
「不満というか厳しいというか」
「厳しい?」

 離婚話からの流れで実家売却のことまで話してしまったけれど、何事にも厳しく真面目な匡くんにとってはたぶんここから私が話す内容の方が呆れてしまうと思う。

 言いたくないけどここまで話したのだから誤魔化すわけにもいかないし……。

 ちらりと匡くんを見る。

「先に言っておくけど、お前バカだろって言わないでね」
「内容によるな」

 すでになんだかもう不機嫌な匡くんがちょっとこわくて、私は恐る恐る口を開いた。

「ネイルサロンの開店資金で貯金ほとんど使っちゃって……。すぐに使えるお金が手元に残ってないんだよね」
「それでひとり暮らしをする金がないってことか」
「そうです」

 お前バカだろという言葉は返ってこない。ホッとした私は言葉を続ける。
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