敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている

「藤野さんのこと本気で狙っている子たくさんいたから。結婚なんて悪い冗談であってほしいってみんな泣いてますけど、結婚って本当なんですよね。ただの噂ではなく?」
「事実だよ」

 さらりと答えれば小久保さんは頭を抱えて「事実なんだぁ」と小さく叫んだ。

「失恋が確定した子がたくさんいますよ、藤野さん。どう責任を取るおつもりですか」
「どうって、どうすればいいの?」

 失恋だかなんだか知ったことではないが一応尋ねてみると、小久保さんもノリで言っただけらしく「どうしましょうかね」と笑っている。

 それからふと人差し指を顎にちょこんと当てて、考えるような素振りを見せた。

「藤野さんのご結婚相手って航空関係者ですか?」
「いや、違うよ。親友の妹」
「えっ、なにそれ。ロマンチックな匂いがぷんぷんしますけど。親友の妹を奪ったってことですか」
「奪うってなんだよ」

 物騒な言い方はやめてほしい。が、当たらずも遠からずなので自嘲気味な笑みを浮かべてしまった。

 杏をもう誰にも取られたくないという強い思いから、けっこう強引な手を使って結婚に同意させたことは否めない。

「それって、どちらから告白したんです?」

 小久保さんは俺の結婚相手が親友の妹だということに興味を抱いてしまったらしい。目を輝かせながら尋ねてくる。

「告白は……俺ってことになるのかな」

 実際には俺は杏に告白はしていない。けど、結婚の提案をしたのは俺だから告白も俺ってことでいいのかと適当に答える。
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