敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
本当は今すぐにでもさっきの場所に戻って和磨の頬を叩きたい。でも、そんなことをしても私の心はきっと晴れない。
私は最初から和磨に愛されていなかった。彼は自分の美容室を開くために私と結婚をして、生活費を負担させることが目的だったんだ。
だから美容室が軌道に乗って私のお金が必要なくなった途端に一緒に暮らすアパートに帰らなくなり、本命の彼女とばかり会うようになったのだろう。そして、私に彼女との関係を知られると別れを切り出してあっさりと離婚をした。
私は和磨に利用されるだけされて、用済みになって捨てられたんだ。
不倫がわかるまで和磨も私のことを好きで、あの結婚にはちゃんと愛があると信じていた。本当は最初からずっと裏切られていたのに……。
「――大丈夫ですか?」
通りすがりの女性がうずくまって泣いている私を心配して声を掛けてくれた。
「大丈夫です」
震える声でそう答えて立ち上がる。まだ涙の残る目をごしごしこすると、声を掛けてくれた女性に軽く頭を下げた。
こんなところで泣いていても仕方ないから家に帰ろう。
さっきは泣きながら走ってきた道を、今度は駅に向かってゆっくりと歩き出した。