敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
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マンションに到着すると、玄関には匡くんの靴があった。彼も仕事を終えて帰宅しているのだろう。
廊下の先にあるリビングの扉から光が漏れているのを見ると、まだ起きているらしい。早いときだと彼はこの時間にはもう寝ていることもあるから。
「ただいま」
扉を開けると、ソファに座っていた匡くんが私に気付いて振り返る。
「おかえり、杏。夕飯どうした? 食べてきた?」
「ううん、まだだけど……」
帰宅早々、夕飯の話をされて困惑する。
今月に入って同居が始まってから私たちが一緒に夕飯を取ったのはまだ数回。
仕事のある日は私の帰宅時間が遅いのと、匡くんが国際線のフライト業務のときはしばらく家を空けることもあり、なかなか夕飯の時間が合わないのだ。
お互いに適当に食べることにしているから、こうして夕飯を食べたかどうか聞かれるのは初めてだった。
「それじゃあシチュー食べる?」
ソファから立ち上がった匡くんがキッチンに向かって歩いていくと、厚手の鍋に火をかけた。
「シチューって匡くんが作ったの?」
「そう。ルーは市販のだけどな」
匡くんが鍋の中身をぐるぐるとかき混ぜる。