敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
和磨は自分の美容室をオープンさせるために私を金づるとして利用したこと。不倫相手だと思っていた女性とは私と結婚する前から関係を持っていて、私のことは初めから好きではなかったこと。
肩を震わせて嗚咽を漏らしながらもすべてを話した私のことを、匡くんはずっと抱き締めていてくれた。
「お前の元夫は相当なクズだな。一発殴りに行くか」
「えっ……」
私もそうしたいと思ったけれどやめた方がいいと思う。慌てて顔を上げると「冗談だ」と、匡くんが呟く。
「そんな子供じみた方法で怒りを晴らしたりはしない。やるなら然るべき方法で責任を取らせる」
「然るべき方法?」
いったいなんだろうと思い尋ねてみたけれど、匡くんは私の頭をポンと撫でるだけで教えてはくれない。
「大丈夫。杏には俺がついてるから」
そう言って、抱きしめていた私の体をそっと離す。
ぐつぐつと沸騰している鍋に蓋をして火を止めた匡くんが「ちょっとここで待ってろ」と言い残し、足早にキッチンを出てリビングをあとにした。
どこに行ったのだろう。
突然ぽつんと取り残されてしまった。
とりあえず言われた通り彼を待つことにした私は、とぼとぼと歩きながらソファに移動する。止まらない涙を服の袖でぬぐいながらちょこんと腰を下ろした。