敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
しばらくするとリビングの扉が開いて匡くんが戻ってくる。その手にはなぜかバラの花束を抱えていた。
「匡くん、それどうしたの」
ソファから立ち上がり目を見開く。
ぽかんとした表情を浮かべている私のところまで、長い脚で颯爽と歩いてきた彼が目の前でぴたりと止まった。
「明日、婚姻届を出すだろ。その前にこれを杏に渡したかった」
匡くんは抱えているバラの花束を私に手渡す。両手で受け取ったものの、なぜこれを?と、頭に疑問が浮かんだ。
数えてみるとバラは十二本ある。
「杏」
「は、はいっ」
名前を呼ばれて顔を上げると、いつになく真剣な眼差しで私のことを見つめる匡くんと目が合った。
「これからお前にプロポーズをするが、答えは〝はい〟以外は認めない」
「えっ……」
そんな脅しのようなプロポーズあるの? というかプロポーズって……。
「愛してる、杏。俺と結婚してほしい」
今、匡くん愛しるって言った? 私を?
彼の突拍子のない言動に気が付くと涙はすっかり止まっていた。代わりに心臓がバクバクと脈を打ち始めて、匡くんのことを見つめたまま固まってしまう。
「指輪はサイズがわからないから用意ができなかった。明日、婚姻届を提出したあとで見に行くぞ」
「う、うん」
勢いある彼の言葉に釣られるように頷いたもののこの状況がうまく呑み込めない。なぜ私は今、匡くんにプロポーズをされているのだろう。