八千代くんのものになるまで、15秒





「倉木、真田が呼んでる」
「これ倉木のでしょ?落ちてたよ」
「倉木が昨日言ってた映画ってこれ?」



『これから私のこと"倉木"って呼んだら、私も梓希くんにキスすることにしたから』


……こんな私の言葉、梓希くんは痛くも痒くもないってことがこの数日で分かった。



「あのさ、梓希くん」
「なに?」

「私のことまた"倉木"って呼んだね?」
「そうだね」

「わざとかな?」
「さぁ?」



昨日私が話題に出した映画の予告動画をスマホで流し見している梓希くんは、どこか楽しそうだ。



「……こんなはずじゃなかったんだけど」
「だろうね」



梓希くんが"倉木"って1日に何回も呼ぶから、
その対応に追いついていない。
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