八千代くんのものになるまで、15秒


そんな百合さんを見て、仁さんは可笑しそうに笑ってる。




「あ、そうだったんですね……」




デートの帰りだって、さっき仁さんも言っていたし、
薄々そうなんじゃないかな、とは思っていたけれど……




「あっ、良かったら梓希くんと蓮ちゃんも一緒にご飯食べる?お鍋にしようと思って、材料たくさん買ったの」

「いや、俺達はいいよ」

「本当に?お前、百合と話すの久々だろ」

「うん。いい。」




……ねぇ、八千代くん。




「──付き合って1年記念なんでしょ。2人の邪魔したくないし」




いつものように、笑えてると思ってるんでしょう。

……笑えてないよ。私には、悲しそうに見えるよ。




「覚えててくれたの?ありがとう……でも本当に遠慮しなくていいのに……」




嫌でも覚えてたんじゃないのかな。
好きな人に彼氏が出来たその日のことを、八千代くんは忘れられなかったんじゃないのかな。

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