八千代くんのものになるまで、15秒
『ローファーを隠した子の気持ち、分からなくもないし』
『腹立つよね。好きな子が他の人に夢中になってるとこ見るとさ』
いつも余裕そうな八千代くんが、
今では辛そうに見えるから。
そんな八千代くん、私だって見たくないから。
だって、八千代くんには、笑ってて欲しいから。
「っあの!」
『見つかって良かったね』
あの時助けてもらった時みたいに、私だって、八千代くんを助けたいよ。
「わ、私、八千代くんに勉強教えてもらう約束してて……だからっ、その、今日はこれで失礼します!」
バッと頭を下げて、八千代くんの手首を掴む。
「っは?」と、驚く八千代くんを無視して、私は駅に向かって勢いよく走り出した。