八千代くんのものになるまで、15秒





「っ、くらき」

「……」

「倉木ってば、」

「なにっ」

「ちょっと、一回落ち着いて」




改札を抜けて、ホームへと続く階段を降りる。

発車のベルが鳴っている電車に飛び乗って、乱れた息を必死に整える。




「っはぁ、よ、よかった……電車乗れて」

「あー……はは、そうだね」




走ったせいで暑いのか、前髪を鬱陶しそうにかき上げながら八千代くんはそう言った。

そんな八千代くんがどこか色っぽくて、思わず見惚れてしまう。


……ん?
いや、ちょっと待って。



八千代くんって、この電車、使わないんじゃ……


サーっと青くなる私に、「気付いた?」なんて、ほんの少し意地悪く笑う。




「ごめんっ、勢いでいつもの電車乗っちゃった……」

「いや、いいよ。ついでだし、駅まで送る」

「えっ、でも、」




「いーから。」と、そう言って私の髪を撫でた八千代くんは、空いている席に座った。

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