八千代くんのものになるまで、15秒
今まで幼なじみとして上手くやってたのに、自分の気持ち伝えたら、バラバラになっちゃうかもしれないもん。
そんな怖いこと、優しい八千代くんは、出来ないよね。
「……私には、隠さないでよ」
誰にも言えないで、自分の気持ちを閉じ込めておくの、苦しいと思う。
辛いと思う。
「私、誰にも言わないよ。梢にも言わない。だから、いいよ。百合さんが好きって、言っていいよ」
「……」
「私、八千代くんが笑ってくれるなら、何でもするよ」
その瞬間、ガタン、と電車が大きく揺れた。
体が横に倒れそうになるのを慌てて踏ん張る。
何とか重心を元に戻した時、肩に心地よい重さを感じた。
柔軟剤のような匂いがふわりと香って、ドキリ、と今度は心臓が大きく鳴った。
「や、八千代くん……?」
八千代くんの髪の毛が頬にかすかに当たる。
猫っ毛なのか柔らかくて、八千代くんとこんなに近付いたのは初めてで。