八千代くんのものになるまで、15秒
息、止まりそう。
肩に寄りかかった八千代くんは、小さな声で私の名前を呼んだ。
「……何でもするとか、そーいうの、男の前で軽々しく言うの良くないよ」
確かに、その通りかもしれない。
でも、
「八千代くんにしか言わないよ……」
私がこんなに必死になるのは、きっと八千代くんにだけだ。
「ほんと、俺のこと好きだね」
「すっ……き、というか、ファンというか……」
「あー……まぁ、どっちでもいいけどさ」
八千代くんが、今どんな顔をしているのかは分からない。
でも、ほんの少しだけでも気が休まっていればいい。
休まってくれてたら、いいな……。
「慰めてくれる?」
「え、」
ちらり、八千代くんを見ると、彼は私のことを見上げていた。
「前みたいに、俺の首にキスマつけたり……そーいうの、倉木はできる?」
4月、八千代くんの首筋についていた紅い痕を思い出して、かぁぁっと、頬が熱くなった。