丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう
志田「ううん…」
杏樹「鈴嶺に、軽蔑されたくない……!
大切な親友なの……」

志田「………でもさっき会った感じでは、軽蔑しそうにないけどな。鈴嶺ちゃん」
杏樹「………」

二人は、しばらく抱き合っていた。


そして━━━━━━━


鈴嶺「あ!ハンカチ!トイレかな?」
鈴嶺は、もう一度トイレに引き返す。

しかしすぐ、ピタリと足を止めた鈴嶺。

鈴嶺「え……杏ちゃ……」

そのまま、また踵を返し離れに戻ったのだった。


杏樹と志田が、抱き締め合っていたから。


鈴嶺(やっぱり、恋人さんなんだ……
でもなんで、おじ様なんて言ったんだろ?)

杏樹の表情、二人の雰囲気……それだけで、お互いが想い合ってるのがわかる。

鈴嶺(どうして、本当のこと言ってくれなかったんだろう……)


どうして━━━━━━━

鈴嶺の心の中に、小さなモヤモヤが棲みついた。



志田「━━━━━━鈴嶺…ちゃん?」
後日、鈴嶺が佐木とショッピング中。
突然、声をかけられた。

鈴嶺「え?あ、志田さん。こんにちは」
志田「こんにちは!」
佐木「お嬢様、こちらは?」
鈴嶺「杏ちゃんの……おじ様」
佐木「さようですか。
こんにちは。
私は鈴嶺お嬢様の執事をしてます、佐木と申します」
丁寧に頭を下げる、佐木。

志田「こんにちは、志田と申します。
杏樹がお世話になってます」

佐木「志田…?」(まさか、赤王の若頭じゃないよな……?)
佐木がジッと志田を見つめる。

志田「何か?」
佐木「あ、いえ…失礼いたしました」

??「失礼いたします。
━━━━━━」
男が寄って来て、志田に耳打ちする。
志田「あー、わかった。
……………鈴嶺ちゃん、佐木さん、ではこれで…!」
一瞬だけ雰囲気が鋭く尖り、でもすぐ柔らかくして鈴嶺と佐木に向き直った、志田。
微笑み、軽く手を上げた。

鈴嶺「はい…さようなら」
佐木「さようなら」

鈴嶺「…………志田さん、杏ちゃんの彼氏さんなんだよ、きっと……」
志田の後ろ姿を見ながら、鈴嶺がポツリと呟いた。

佐木「え?」
鈴嶺「絶対、そう。
でも杏ちゃん、親戚のおじ様だって言うの。
どうして、隠すのかな?」

佐木「お嬢様?」
鈴嶺「杏ちゃん、私のことどう思ってるんだろ?
もちろん、お友達だからって何でも話してほしいなんて言うつもりないよ。
でも、恋人さんの事は聞きたい!何か困ったことがあったら、力になりたい!」

佐木「杏樹様に、会いに行きましょう!」
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