いつまでこうしていたんだろう。
屋上のドアが開く音で、私は目を覚ました。
いつの間にか眠ってしまったんだろう。
それにしてもいったい誰がドアを開けたんだろう。
目元は腕で隠れているからよく見えない。
「あれ?ここにもいない。」
男の人の声がする。
ん?この声、どこかで聞いたことある声のような……?
気のせいか。
誰かを探しているようだが、私でないことは確かだ。
ここはドアが付いている壁の陰になっているところだから、多分気づかれないだろう。
このまま出て行ってくれることを祈る。
「ったく、どこにもいない。」
一瞬、耳を疑った。
「どこにいるんだよ、優希って人。」
「私?」
声を発してしまったことを今更後悔した。
まさか私のことを探しているなんて思ってなかったから驚いて。
「え?……いるの?」
声の主は私の声には気づいたもののどこにいるかはわかっていないようだ。
私は息をひそめ、はやく出て行ってくれることを祈る。
「なんだ。聞き間違いか。」
そう言って男はドアを閉めて出て行った。
「………誰?今の人。」
寝転がったまま腕をどけ、目元を出した。
「私のこと探してたみたいだけど…苗字が一緒なだけの人間違いか」
「ここにいたんですね。」
「わっ!!誰!?」
いきなり顔を覗き込まれ、知らない男の人が視界に飛び込んできた。
「なんでさっき出てきてくれなかったんですか?」
「え!?なんでいるの?さっき出て行ったんじゃ…!」
「出て行ってません。ドアを閉めただけ。てかイヤホンしてるのに声聞こえるんですね。」
なるほど、そういうことか。
はあ………最悪すぎる。
あのまま起きずに寝ておけばよかった。
< 13 / 38 >

この作品をシェア

pagetop