あ

一見おとなしそうな子だが、こいつが、私の人生を変えた。
こいつが、私が嫌われるようになった原因。
「何？」
「昼休みに、特別教室に来てくれない？音楽室の隣の。話したいことがあるの。」
「いや。なんで行かきゃなんないの。」
「来ないとどうなるかわかってるよね？あんたの過去、全部ネットに書き込むわよ。」
「………分かった。」
川西は、肩までの髪を指でいじりながら、満足したように自分たちの席へ戻っていった。」
もう散々学校中の人にばらしたくせに、次はネットに書き込むだって？
何言われるか知ったこっちゃないけど、面倒くさいことは確か。
鈴木先生が戻ってきて授業が始まったが、私はなかなか集中できず、この時の授業は全く頭に入ってこなかった。
二限目が始まる前、四宮君に声をかけられた。
「さっき授業が始まる前、あの人と何話してたの？」
四宮君はそう言って川西のグループを指さした。
「ああ、何でもないよ。たいしたことではないから。」
「でも、話し終わった後の優希さんの顔、大丈夫そうには見えなかったけど…。」
きっと心配してくれてるんだ。
こんな見ず知らずの私を心配してくれて、優しいんだろうな。
あ、そっか。四宮君は、私の過去の話をまだ聞いてないんだ。
「優しいんだね。四宮君。でも心配しなくても大丈夫だから。」
「でも……。」
私は、何か言いたげな四宮君のことを無視して教室を出た。
実は、話しているときも四宮君の顔を直接見れなかった。
もし、四宮君の言う通り私の顔が大丈夫そうでないんだとしたら……。
そう考えると、まともに四宮君の顔なんて見れない。