あ
午前の授業が終わり、食堂でメロンパンを買ってから言われた通り特別教室へ向かう。
向かっている途中、何度かすれ違った人達に冷たい視線を向けられた気がした。
「見て。この子らしいよ。」
突然そんなことを言われ、驚いて振り向く。
しかし、昼休みということもあり廊下にはたくさんの人がいて誰の声か判断できなかった。
なんだか嫌な予感がする。
私のことを言っているのかは分からないけど、可能性はある。
私は逃げるように教室へ向かった。
「遅かったわね。来ないかと思った。」
「何?用があるなら早くしてほしいんだけど。」
ドアを閉めて近くの机に座る。
川西は窓側の前の席の椅子に座っていて、後ろに二人川西にひっついている連中が座っていた。
私は携帯をいじりながらメロンパンの袋を開ける。
鼻腔にメロンパンの甘い香りが広がる。
「お金とったの、あんたでしょ。」
突然の発言にすべての動きが止まった。
「………あんた、いい加減にしな?」
流石に、なんで私が疑われるのかがわからない。
「うわ~怖!そんなに動揺するってことはやっぱりほんとなんだ。」
「私なわけないでしょ。ふざけんなよ。」
「でももうみんな噂してるよ?優希さんが昨日封筒を盗んだ犯人だーって。まあ、優希さんには前科があるし、みんなも納得するわよね。先生の耳に届くのも時間の問題じゃない?」
は…なにそれ……。
また、あの時みたいな事するの?
さっき誰かから聞こえた私を噂する声。
あの声は、誰か一人のものではなくあそこにいたほとんどの人が思っていたものだったのか。
「……また、前みたいなことするんだ。なんでそうやって私のウソをみんなに広めるの?私があんたに何した?中学生の時も高校に入ってからも今この瞬間も。私の何が気に入らないわけ?」
「全部。あんたの全部が気に入らない。だから噂を流したしみんなに広めたのよ!あんたのせいで……あんたのせいよ!」
いつの間にか川西も立ち上がり、スカートをギュッと握りしめて声を荒げていた。
見間違いか、スカートを握る手が少し震えているように見えるが、そんなこと今はどうでもいい。
「………なにそれ。がちきもい。最低。」
私はドアを思い切り開け、苛立つ気持ちをぶつけるべく屋上に向かう。