君と恋をするための三か条
ちらりと麗花を見ると、俺の顔を凝視して固まっていた。

「あ、ありがとう…?」

細い声でそう囁くと、途端に耳まで真っ赤に染めて俯いてしまった。

「ピュアだなあ。いちいち反応が初心で可愛い」

「もう! からかわないで」

麗花が俺をじろりと睨み、腕を小突こうとしてやめる。

「運転中で良かったわね!」

ふんと言い放ってそっぽを向かれては悲しい。

「からかったわけじゃないよ。ほんとに可愛いと思ってるの。良いとこのお嬢様にしてはあどけないし、純粋で」

「また偏見。〝にしては〟っての、やめなさいよ。それと、そういうこと…可愛いとか、簡単に言わない方がいいと思う」

しどろもどろになる麗花に詫びてから、ちょっと意地悪に返した。

「なんで?」

「だから、その……勘違いする可能性が、無きにしも非ずっていうか…わ、私は全然、そんなことないけどね!」

「ふーん? 耳まで真っ赤に見えるのは気のせいなのか。 まぁでもご心配には及びませんよ。麗花にしか言わないから」

前を向いたままくすくす笑っていると、麗花は隣で「な、ちょっと、それどういう意味…!」なんて慌てふためいていた。

まだ教えてやらない。
とりあえず、こうやって俺を男として意識してもらわなければ。
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