そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
一章

生まれながらにして高い魔力を持ち、三百年をも生きるとされる魔族が住まう国、ロッシュドギア。

気候の変動が激しい国ではあるが、三十を超える大小様々な町や村が点在し、優美な山地も含めて広大な土地を有している。

首都のケンプトルは国の東南部に広く位置しており、魔王として君臨しているゼノン・アンドリッジの住まう豪華絢爛な王宮をはじめ、政治の行われるケンプトル議事堂、魔力研究が盛んに行われているロッシュドギア高位魔法研究所、その他学問に医療など多くの主力機関が集中している。

そんな大きな世界の中で、六歳になったばかりのソフィア・アンドリッジが生きる世界は、王宮の敷地内の東の外れの一角と、とっても狭いものだった。

赤ん坊の頃から暮らしているのは、今にも崩れ落ちそうな二階建ての古めかしい洋館。

そして、誰の目も気にせず自由に動き回れる範囲は、まるで洋館を隠すかのように取り囲んでいる鬱蒼とした森の中だけ。


「今日はいいお天気ね。森へ散歩に行きたいわ」


踏み台に登り、洋館の窓から薄暗い森を見つめてソフィアが呟くと、窓から晴れ渡った空を見上げるようにして侍女のハンナもソフィアの横に並ぶ。

< 1 / 276 >

この作品をシェア

pagetop