そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
昨日終日続いた土砂降りの雨から一転して、空は眩しいくらい快晴だ。


「そうですね。池のほとりに咲いている花が見事だと侍女たちが言っていましたし、おやつも兼ねて散歩に行きましょうか」

「うん! ハンナ大好き!」

「私もです、姫様」


ソフィアは嬉しそうに顔を綻ばせて、踏み台の上から飛びつくようにハンナに抱きつき、ハンナも愛おしげにソフィアの小さな頭を撫でた。

ソフィアはご機嫌なまま、ハンナと共に二階の自室へ移動し、背中の中ほどまで伸びたゆるく波打っている綺麗なストロベリーブロンドの髪を、邪魔にならないように二つに束ねてもらう。

それからキッチンに向かい、おやつにと用意されていたマフィンをバスケットに入れ、敷物がわりの小さいブランケットを蓋がわりに上にかけた。

それをハンナが左手に持ったため、ソフィアは彼女の空いている右手をぎゅっと掴んだ。

掃除だったり裁縫だったりと、それぞれの仕事に取り掛かっていた他の侍女三人に「お散歩に行ってきます」と声をかけて屋敷の外に出る。

夜中まで降っていた雨のせいでぬかるんでいる獣道を、洋館の西側にある池に向かってぎこちない足取りで進んでいく途中、小さく光が瞬いた気がしてソフィアは顔を上げる。

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