そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
「洋館までお運びしましょうか」

「……だ、大丈夫。歩いて帰れるわ」


甘えたら悪い気がしてソフィアは首を横に振る。

そして、立ち上がり一歩進んで見せたが足取りはおぼつかなく、恐怖で竦み切った両足の感覚をまだ完全に取り戻せていないのは明らかだった。


「痩せ我慢しないで頼ってください」


マシューから力づけるように笑いかけられ、ソフィアの胸が切なく軋んだ。

この男性(ひと)が私のお父様だったら良かったのに。

今まで幾度となく考えてきたことを改めて思いながら、ソフィアはマシューへと「お願いします」と小さく望みを口にした。

ひょいと、マシューが片手でソフィアを抱き上げると、ハンナもバスケットとブランケットを抱え持って、「ありがとうございます」とお礼を言いながら二人のそばに駆け寄る。

溺れている間に池の水を少し飲んでしまったようで口の中で変な味がし、ソフィアはコホコホと咳き込みながら何気なく対岸へと視線を向ける。

再び途切れていた演奏がなに事もなかったかのように始まり、ソフィアを蔑むように見つめていた人々はすでにこちらなど気にかけていなかった。

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