そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?

そして池に浮かんでいる水蛇の頭部に氷柱が突き刺さっているのを目にしてから、自分の傍に立つ人物へと視線を昇らせた。

翳りを帯びた男性の大きな姿が自分の父親に見えて、ドキリと鼓動が跳ねる。

驚きと共に嬉しさが込み上げてくるも、男性がゆっくりその場に片膝をついて視線の高さを同じにし、「大丈夫ですか」と声をかけてきたことで、喜びの感情は跡形もなく消え去った。


「……マシュー……たすけて、くれて、ありがとう」


助けてくれたのは父ではなく、父の側近であるマシューだった。

ソフィアと同じくずぶ濡れのマシューは薄茶色の髪からポタポタと水滴を滴らせながら、爽やかな笑みを浮かべて力強く首を横に振る。


「ご無事で何よりです」


マシューは父と同じくらいの年齢で背丈も近い。しかし、父を初め、冷たい態度の大人たちが多いのに彼だけは親切で、いつもにこやかにソフィアに気遣いの言葉をかけてくれる。

マシューが引っ張り上げてくれたのは洋館側の池のほとりだ。

対岸にいる魔族たちはこちらを気にしていても、マシューのように助けようと行動に移してくれた人はいないようだった。

少し肌寒く感じでぶるりと体を震わせると、そっとマシューの手がソフィアの頭に触れた。

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