そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
「いや、目印にするなら聖樹だ。こんなところで咲いているとしたら、その近くでしかありえない」
板書はしていなかったが、確かにケイト先生は言葉でそう補足していた。
ソフィアは「そうだったわ」と頷いた後、ゼノンがついてきてくれたことの頼もしさに思わず口元を綻ばせた。
聖樹は魔力を宿した特別な樹木で、時折葉脈を輝かせては水滴をしたたり落とす。
その水分にはわずかながらも光の魔力が含まれているため、扱いが難しいファストでも生息可能なのだろう。
頭上を見上げて輝く葉を持つ木を探し、ソフィアはゆっくりと森の奥へと足を踏み入れていく。
ヒントは教えたものの共に探す気はないらしく、ゼノンものんびりとした足取りでソフィアに続いていたが、途中で「あっ」と身をかがめて、足元に転がっていた石を掴み上げた。
上ばかり気を取られていたからか、弾力のある柔らかなものをむぎゅっと踏みつけてしまい、ソフィアは視線を落としてぎくりと息を呑む。
踏んでしまったのは小さな蛇で、子供の頃の水蛇に襲われた記憶が呼び覚まされる。
体が竦み咄嗟に声も上げられない中、踏みつけられた蛇は威嚇の声を鋭く発し、ソフィアの足へと噛みつこうとする。
「大丈夫か?」