そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
ゼノンが駆け寄ってくると同時に、ソフィアはその場に尻餅をついた。
足元では頭部に氷柱が突き刺さった蛇が悶え苦しんでいて、ゼノンはチッと舌打ちをする。
「間に合わなかったか」
間一髪のところで噛まれはしなかったものの、蛇が放った毒液がソフィアの足にかかってしまっていて、ズキリと走った痛みに顔を顰める。
一気に額に汗が浮かんできたソフィアをゼノンは横抱きにし、そのまま森の奥へと向かって歩き出した。
「……ど、どこへ行くの?」
少しかすみ始めた視界で捉えたゼノンの横顔は怒っているように見えた。
子供の頃、水蛇に襲われた後に自分に向けられたゼノンの表情と似ていて、私、このまま森の奥に捨てられてしまうかもとソフィアは怖くなる。
しかし、連れてこられたのは澄んだ小川が流れる場所で、川の傍にある大きな岩にゼノンはソフィアを座らせる。
ゼノンは男子制服の胸ポケットに差し込んである白いスカーフを引き抜き、躊躇いもなくそれを清流の中へ浸す。
絞ったそれで、ソフィアの足にかかった毒液を拭き取るも、その箇所は既に少し青ずんでしまっていて、毒の強さを物語っている。