そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?

再びスカーフを清流へ浸し綺麗にし、「ソフィアよりは下手だが我慢しろ」と前置きしつつ、ゼノンは青ずんだ部分にスカーフを再び押し当て、その上から手をかざす。

輝き出した手から魔法陣が現れ、スカーフの冷たさと患部の熱が入り混じっていたところに、別の温かさがじわりと染み込んでくる。

それはやがて、熱を抑え込んでいき、清流の冷たい感覚だけがソフィアに残った。

徐々に視界もはっきりとしていくのを感じながら、ゼノンの光の魔力での治癒を身を持って体験したことに「今のは貴重だったわ」とソフィアは心の中で呟く。

スカーフはすっかり青黒く染まり、ソフィアの皮膚もまだ少し青ずんでいる。スカーフを岩の上に広げ置いて、ゼノンはソフィアを再び抱きかかえ歩き出した。


「保健室に行くか」

「へ、平気よ。痛みも引いたし歩けそうだわ」

「まだ足に毒が残ってる。あれは毒性が強い蛇だし、油断しない方がいい」


ちょうど襲われた場所に差し掛かり、氷柱が頭部に刺さった状態で息絶えている蛇をゼノンは忌々しげに見た。

森に捨てられるどころか的確に治療を施してもらい、こうして保健室にまで連れて行ってくれようとしている。

ソフィアは横たわっている蛇と、かつての記憶を重ね合わせながら、感じたことを言葉にする。

< 188 / 276 >

この作品をシェア

pagetop