そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?

森の木々の隙間から見える豪華絢爛な王宮を視界に捕らえた瞬間、込み上げてきた重苦しい感情に対して、ソフィアは僅かに表情を曇らせた。

そこに住まうのはロッシュドギアの国王であり、自分の父親でもあるゼノン・アンドリッジ。

漆黒の髪、冷たさを内包したような藍色の瞳に色白の肌。すらりと背は高く、いつも黒の衣を身に纏っている。

整いすぎている美麗な容姿は目を引くが、冷淡な性格が眼差しの鋭さから滲み出ているため近寄り難い。

ソフィアは五歳の誕生日にゼノンと森の中ですれ違って以来、一年以上、その姿を見かけていない。

それ以前も自分の住まうこの屋敷にゼノンが訪ねてくることがなかったため、父が自分に興味がないことを、元々ソフィアは感じていた。

それでも、母親のいないソフィアにとって肉親はゼノンだけで、寂しさと同様に父親への思慕の念を抱いていたのだ。

久しぶりに父親の姿を見たあの時、嬉しくてソフィアの気分は一気に舞い上がっていった。

しかもその日は自分の誕生日でもあり、「おめでとう」と優しく言葉をかけてくれるかもと考えたのだが、目と目が合うと同時に淡い期待は呆気なく打ち崩された。

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