そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
水蛇に襲われた三日前のことを思い返せば、嫌悪感たっぷりに自分を見ていた父の顔が脳裏に蘇ってくる。
あの冷酷な父の興味を引くことなんて果たして私にできるのだろうかと、ソフィアがため息をついた時、扉がノックされ、室内にハンナが入ってきた。
「姫様、起きていらしたんですね。……少し顔色が悪いようですけど、ご気分はいかがですか?」
目が合うとすぐに駆け寄ってきて、心配そうに顔を覗き込んでくるハンナの優しさに心がじわりと温かくなり、ソフィアは笑顔になる。
「ハンナ、いつもそばにいてくれてありがとう」
ハンナは驚いたように目を見張ってから照れたように微笑んで、ソフィアを軽く抱きしめた。
「私こそ、姫様にお仕えできて幸せです」
返ってきた言葉にソフィアは「えへへ」と笑って、小さな手を伸ばしてハンナに抱きつく。
「私、ハンナやみんなと一緒に幸せになりたい」
この先どうなるのだろうという漠然とした不安は尽きない。
けれどそれよりも強く自分の中にある「幸せを掴みたい」という願いとソフィアは向き合い、はっきりと言葉にした。
「だからお勉強を頑張るわ」
「まぁ姫様。それなら私も教育係として、一緒に頑張らせていただきますね」
ソフィアの力強い宣言に、ハンナは感激で瞳を輝かせ、嬉しそうに頷いた。
ミルドフキローアカデミー入学まで、あと十年。
それまでにどれだけレベルをあげられるかはわからない。
けれど、悲惨な結末を回避し、自分の人生を良い方向へと進めていきたいなら、やるしかないとソフィアは決意した。