そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
ぱしゃりと、池で魚が跳ねたような音がして、ソフィアの気持ちはそちらへ移り変わっていく。
「お魚さんも元気かしら」
立ち上がってゆっくり池に向かっていくソフィアを追いかけるようにハンナも続く。
「姫様、滑りますので気をつけてくださいね」
ほとりを進んで対岸へ向かうのにそれなりの時間がかかるほどに池は大きい。そのため容易に向こう岸へと渡れるように橋が掛かっている。
まるで池を分断しているかのような橋は、両脇に手すりなどついていなく、板を繋ぎ合わせたような簡素なもの。
あまり手入れもされていないため、ところどころ苔が付着し、ソフィアはハンナの言葉に従って注意深く進んでいく。
しかし、その足は橋の中央あたりでぴたりと停止した。
この橋の向こう側は、自分が気軽に足を踏み入れて良い世界ではないとソフィアは感じていたからだ。
橋の先にはしっかりと整備された小道があり、それは真っ直ぐ王宮に続いている。
王宮に達するまでの途中にも、騎士団宿舎や馬小屋に温室など幾つもの建物があり、たくさんの魔族たちが忙しなく行き交っている。