そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
一年半ほど前、ハンナに止められつつもどうしても王宮のそばに行きたくて橋を渡ってしまったことがあった。
その時、大人たちからさげずむような冷たい眼差しを向けられたのだ。
いまだに彼らの表情を思い出しては体が萎縮し、それ以来、絶対にソフィアは橋の中央より向こう側に足を踏み入れなくなった。
お父様だけでなく、他の人たちも私を好きになってくれないのね。
そんな寂しさを唇を噛んで堪えながら、ソフィアは橋から池を覗き込む。
いつもは、泳いでいる魚を目視できるほど水が澄んでいるのだが、雨の影響か今日はひどく濁っている。
「何も見えないわ」
「そうですね。魚の泳ぐ姿は見れそうにありませんが、代わりに鳥たちの囀りがよく聞こえますよ。小花の近くに敷物を敷いて、マフィンを頂きましょうか」
ソフィアはその提案に「うん」と頷き、橋を戻り始めたハンナに続こうとした時、再び水面で何かがぱしゃりと音を立てた。
足を止めて、水面に広がる波紋をじっと見つめていると、今度は人々の話し声が聞こえてきてぎくりと肩を揺らす。
恐々と顔を向けて、王宮側の池のほとりに現れた大人たちの姿を確認すれば、その場から離れたい気持ちとは裏腹にソフィアの足が動かなくなる。