そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?

ルイスの大きな手がソフィアの小さな顔の前にかざされる。

昨日の朝のように手のひらからふわりと温かな風が生じ、それに心地よさを感じたのも束の間、熱さと共にソフィアの鼓動がドクッと大きく高鳴り、視界に赤い火花が散る。

息を飲んだソフィアの顔の前から手を下ろし、ルイスは「姫様」と呼びかける。

ソフィアは朧げながらも視線を上げて、ルイスと目を合わせた。

黒色だったルイスの瞳が金色に輝いていることにほんの一瞬驚くも、目の中で光が瞬いているのに気づけば、とても綺麗だわとソフィアはぽうっと瞳に魅入った。


「はい。終わりました」


容赦なくルイスに視線を逸らされたことで、ソフィアは夢から覚めるようにハッと我を取り戻す。

「ご気分はいかがですか?」とすぐに近くに控えていたハンナから声をかけられ、ソフィアは「大丈夫よ」と笑いかけてから、ルイスに視線を戻した。

ルイスは手に取った羽ペンのペン先をインクに浸した後、納得するかのように頷きながら真っ白な紙にサラサラと文字を書き始める。

『魔力属性鑑定における結果報告』

ソフィアが最初の一行目をなんとか読み終えた頃には、ルイスは猛烈な速度で一気に書き上げ、ジャケットのポケットから取り出したナイフで己の指先を切り、最後にしたためたサインへ血液を一滴たらす。

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